手品の完成について

最近、ずっといじくってたカードのトリックが2個完成した。アイデアの萌芽の時点にまで遡ると数年はかかったかと思う。小品ながら、わりと長いことああでもないこうでもないと模索してきたものだった。

2つとも、決め手となるアイデアが降ってきたとき「あ、完成した」と思った。それまでこれらのトリックを矯めつ眇めつ「まあ、完成ということでいいかな」と思ったことも何度となくあったのだけど、この「完成ということでいいかな」という感覚には欺瞞が紛れ込んでいて油断ならない。ふとひらめきを得て「完成した」と気づいたとき、本当は内心「ここがどうにかならないかな」と思っている箇所があったが、それに目をつぶっていたことを自覚できた。その逡巡が「完成ということでいいかな」という態度に表れていたのだなと。

だから「完成ってことでいいかな」ではダメで、やはり「完成した」と感じる瞬間まで待たなければならない。自分の内心の分水嶺を見極める必要がある。最近思いついた2つのトリックも、これからよりよいハンドリングとか策略を思いついて更に改良していくことはあるかもしれないが、それはあくまで部分的な問題であって、本質的に完成を遂げたのはやはりあの「完成した」という感覚を得た瞬間だと思う。

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